切ない春も、君となら。
「こんなとこで偶然だねー。てか、学校は? 春日が自主的にサボり?」

小首を傾げてそう聞いてくる莉菜は、普段と変わらない笑顔だけど……それがかえって恐ろしい。
彼女と会うのは、あのカラオケボックスでの事件以来だ。
あの時に莉菜が怪我をしたのは私のせいではないけど、その前に楯突いたのは事実だ……私のこと、絶対に良く思ってはいないだろう。


「莉菜の友達?」

男性がそう聞くと莉菜は「中学時代のクラスメイト」と答えた。友達、とは言っ
てくれなかった。


「莉菜の……彼氏?」

そう聞くと、とりあえず笑顔で「うん! 最近出来たばっかり」と、彼氏の腕に自分の腕を絡めながら明るく答えた。


「最近? ゴールデンウイーク頃に付き合ってた人は?」

「えー? どんだけ前の話してんの? とっくに別れたし名前も覚えてないんですけど」

莉菜は昔から付き合っている人をコロコロ変える。まあ私には関係ないけど。


「見た目派手だし、悪くねーな。さすが莉菜の友達」

莉菜の彼氏が、物色するように私のことをじろじろ眺める。
何? 何が悪くないの?
こんな風に見られてあまり良い気はしない……というより、何だか怖い。
莉菜の彼氏は、私も人のことは言えないけど明るい髪の色をしていて、ピアスが両耳にたくさんついていて、顎髭が印象的だった。
顔はかっこいいとは思うけど、軽い印象を受ける。
莉菜が制服で堂々とサボっているのに対し、彼氏は私服だ。大学生……かと思ったけど、もしかしたらもう少し年上かもしれない。

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