切ない春も、君となら。
「友達っていうか、元クラスメイトね。何? 気に入った?」

「おう。顔も可愛いしいけそうだな」

「そんなに可愛いかぁ?」

「勿論、莉菜の方が可愛いよ」


何? さっきから何の話をしてるの?

よく分からないけど、嫌な予感がした。これ以上かかわったらいけないような、そんな予感が。


「じゃ、じゃあ私行くね」

その場を去ろうと、早足で二人を横切ろうとしたその時。


「ちょっと待てよ」


莉菜の彼氏に後ろから腕を掴まれる。強い力に、思わず顔を歪める。

私が振り向くと、莉菜の彼氏は突然、もう片方の手で私の胸を触ってきた。


「っ⁉︎ 嫌っ‼︎」

叫び声にも似た声をあげながら、私は精一杯の力で掴まれている腕を振りほどき、彼から離れた。


「うわっ、何だよノリ悪っ。ほんとに莉菜の友達かよ?」

莉菜の彼は、眉間に皺を寄せて、怖い顔で私と莉菜の顔を交互に見る。


「だから友達じゃないって。それにしょうがないじゃん。この子、処女だもん」

「マジかよ。ダセェー、使えねー」

しょ……って、一体何の話をしてるの?
使う、って何?

怖い。
心臓がバクバクと強く脈打って、早くここから去れって忠告されているような気がした。

私だってそうしたい。でも、足がすくんで動けなかった。


すると莉菜の彼が、

「でもまあ、それはそれで価値あるかもな。すぐに慣れるだろうし。ここまで分かりやすく派手な外見した奴が欲しかったんだよ」

と、またしても、意味は分からないけど不穏なことを言う。

すると莉菜が「そう?」と言いながら私の正面に立ち、にこっと笑う。そして。


「そういう訳だよ。私の彼ね、ウリをやってくれる子を探してるの」

……え?
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