切ない春も、君となら。
「ウリ、って……援助交際とかのこと?」

「そうそう。あ、でもまさか、オジサンと手繋いで食事して終わり、なんて思ってないよね? ちゃんと最後までヤるんだよ?」

「最後、って……」

こんなに笑顔で明るく、莉菜は何を言ってるの?


「まさか、莉菜もそんなことしてるの?」

「そんなことって何? ヤるだけじゃん」

「そ、そんなことじゃないよっ。何が目的でそんなことするの?」

「はあー。そういう真面目なこと言われるのウザいんですけど。金もらえるからに決まってるじゃん」

金……。お金の為に、自分の大切な身体を簡単に他人に預けちゃうの?


「結構儲かるよ? それにね、自分が声掛けた女子高生がウリを始めてくれると、私の彼も紹介料ってことでお金をもらえるんだって! だから、春日がウリをやってくれたら、春日も彼氏もお金もらえてハッピー、みたいな?」

そんなこと言われたって、私はウリなんて絶対に嫌だ。手を繋いだり一緒に食事をするのだって、総介くんと一緒がいい。
ヤる……なんてもってのほかだ。


「……莉菜も、彼氏に言われてそういうことしてるの?」

私が聞くと、「そうだけど何?」と返される。


「そ、そんなの大事にされてないってことだよ。やめた方がーー」



最後までは言えなかった。言葉の途中で、莉菜が手にしていた通学用鞄で頭をぶたれた。

そして。


「ごちゃごちゃうるさいんですけど」

「莉……?」

「あんたの意見なんてハナから聞いてねーんだよ! やるかやらないかじゃなくて、やれって言ってんのが分からないの⁉︎」

声を荒げてそう言われたかと思うと、最後に小さな声で、


「私の彼に恥掻かす気? そんなことしたらただじゃおかないから」


と言われる。
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