切ない春も、君となら。
私が莉菜達に絡まれていた路地裏は、幸いにもすぐに大通りに出ることが出来た。
人通りの多い場所まで出てしまえばさっきみたいに絡まれることはないだろうと、私達は安心して足を止めた。
はあはあと息を乱しながら道の端に移動して呼吸を整える朔ちゃんのことを、私も同じ様に肩で息をしながら見つめた。
朔ちゃん、どうして……。
何で私と莉菜の場所が分かったの?
何で私を助けてくれたの?
聞きたいことはあるのに、息は苦しいし、そうでなくても言葉に詰まる。
すると朔ちゃんが私のことを見て、少しの間の後、口を開いた。
「……髪」
「え?」
「髪、黒く染めたんだね」
そう言われ、私は戸惑いながらも、「……うん」と答えた。
すると。
「春日ちゃんは、黒髪の方が似合ってるね」
多少ぎこちなくではあったけれど、にこっと笑いながらそう言ってくれた。
中学時代の仲良かった頃。
あの頃以来に、彼女が私に笑いかけてくれたことが嬉しくて、視界が涙で滲んだ。
そうして私はようやく、「朔ちゃん、何で……」と口にすることが出来た。
何で、としか聞くことが出来なかったけれど、朔ちゃんは私の聞きたいことを理解してくれたようで。
「私……春日ちゃんにずっと謝りたかった」
「え?」
「中学時代のあの時、助けなかったこと。その後、距離を置いたこと」
眉を下げて、切なげな顔をして、そう言う。
あの時というのは、私の机が滅茶苦茶にされていた、あの時のことだろう。