切ない春も、君となら。






私は一体、何をやってるんだろう。
十六年間の人生の中で、間違いなく一番バカなことをした。


「莉菜」


路地裏で見付けた莉奈は明らかに荒れていて、彼氏の胸倉を掴んで暴言を吐いていた。

そして、私の声に反応すると、「泉!」と私に振り返り、彼氏から手を離して私に駆け寄った。


「聞いてよ、泉! 春日の奴が超ムカつくんだけど!」

莉菜が荒れてる原因は、やっぱりそれか。
ということは、春日はウリに利用されずに済んだか。
自分の意志か、それとも朔が上手くやってくれたかは分からないけど、何にせよーー


良かった。



「泉?」

「え? ああ、ごめん」

「あのさ、中学の時に岸谷 朔って奴、確かいたじゃん? あいつが突然乱入してきて、春日を連れてったんだよね。何だったんだろう、偶然?」

あ、そうだったんだ。じゃあ今頃、春日と朔は二人一緒だろう。なら安心だ。


「ねえ泉。あの二人、超ムカつくよね? どうしてやる? このままやり返さずに見過ごすとか有り得ないよね?」

莉菜の瞳は怒りで揺れていて、一方で口元には笑みが浮かんでいた。
この表情が怖くて、私は今まで一度も莉菜に逆らったことはなかった。


だから、これが初めて。


「ねえ、莉菜」

「何? 何か良い方法あるの? さすが泉」

「……


そういうの、もうやめよう」
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