切ない春も、君となら。
「私のことを好きだって言ってくれる人なんている訳ない! 私が今までどれだけの人を脅して、見下して、バカにしてきたのか、泉が一番分かってんじゃん!」

いつも、何に対しても自信に満ちていて揺らがない彼女が初めて口にした弱音ーーのように聞こえた。

悩みなんかないようで、彼女には彼女の、誰にも言えない思いが実はずっと存在していたのかもしれない。


「そんなことないよ、大丈夫だよ」

「簡単に言わないでよ。皆、私のことなんか嫌いに決まってる」

「そんなことない。だって私は泉のことが好きだよ」

私の言葉に、莉菜は少しだけ目を丸くして私を見つめた。


「莉菜に意見をぶつけたいことがあった、って言っただけで、嫌いだなんて言ってないじゃん。
私は莉菜が好きだよ。莉菜といると楽しいことが多い。流行に敏感なところとか、顔が広いところとか、影響力が強いところとか、尊敬してる部分もたくさんある」

だから、と言葉を紡ぎ、私はなるべく笑ってみせる。


「これからは、顔色を伺うことのないような、もっと仲の良い本当の友達になりたいって思ってる」


莉菜は、何も答えなかった。だけど、それでも良かった。言い返さないということは、私の言葉が多少なりとも彼女に届いているからーーと思うことにした。私の意見を押し付けるつもりもない。

だけど、この言葉だけは最後に伝えたかった。

「春日は随分変わったよね。高校で良い友達が出来たんだろうね。
私達も……変わっていこうね」
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