切ない春も、君となら。
「朔ちゃんと泉って、つまり幼馴染みだったんだね?」
大通りを、特にあてもなく歩きながら、私は隣を歩く朔ちゃんにそう言った。
「幼馴染みって言うのかな。昔から性格が全然違ったから、話したことは殆どなかった。親同士が仲良くて、何かあった時のために連絡先は交換しておけって言われてただけ」
そうなんだね、と私は頷く。
特別な話をしている訳ではないけど、朔ちゃんとこうして歩いているだけで、中学時代のほんのひと時の楽しかった時期に戻ったみたいで嬉しくなる。
このままどこかファミレスで夕飯食べようか? と朔ちゃんが言ってくれた。勿論、と答えようとしたその時、ハーフパンツのポケットに入れていた携帯が震えた。電話のようだったので、「ちょっとごめんね」と断りを入れてからディスプレイを確認する。
……基紀君?
どうしたんだろう、電話なんて珍しい……っていうか初めて。
……何故か、少しだけ嫌な予感がして、私は電話に出た。
もしもし、と口にすると、基紀君は焦ったような口調で【春日、今どこにいる⁉︎】と聞いてきて。
とりあえず、今いる場所を伝える。すると。
【総介の家、分かるか⁉︎ 今すぐ行け! あと二十分で、引っ越しちまう!】
……え?