切ない春も、君となら。
「東京の大学を目指す?」
以前会った時よりも少しだけ背が高くなった気がする目の前の彼は、そう言って小さく首を傾げる。
彼と出会って、二度目の春。
第二土曜日の今日、私は春休みに短期アルバイトで貯めたお金で、再び東京に来ていた。
病院近くの公園のベンチに二人並んで座り、私も彼もさっきコンビニで買ったお茶のペットボトルを片手にしながら、会話する。
視線を上げると、桜の木が数本立っている。どれも花びらが満開でとても綺麗だ。
「うん。まあまだ先のことだけど。そうすれば会いたい時に会える距離になる訳だし、寂しくないじゃない?」
私はそう言うけど、彼は「まあ、それはそうだけど」と、どこか困ったような顔をする。
「もしかして、追い掛けてくるのウザいって思ってる……?」
「えっ、いやいや、そうじゃない。こっちに来てくれるのは勿論嬉しいんだけど」
彼は慌てて否定してから、真剣な顔で私を見る。
「お前の進路のことなのに、俺の事情に付き合わせるのは悪いというか」
「総介君のためじゃなくて、私自身がそうしたいって決めたことだから」
「でもさ、上京して一人暮らしするってなると金も掛かるだろ。いくら両親との仲が修復したといっても、そこを納得してもらえるかはまた別の話だろ?」
総介君はいつになく真剣な表情をしていて。
そこまで真剣に私の家族関係のことまで考えてくれていることに、つい嬉しさを感じる。
「うん、確かにね。東京の大学に進学したいった言った時は、最初反対されたよ」
「だろ?」
「でも東大に入学するなら構わないって言われた」
「そうか東大……え?」
彼は目をぱちぱちと瞬きさせながら私を見る。