切ない春も、君となら。
え、え? 何、基紀君の彼女⁉︎

クラスメイトのそういう光景を突然目の当たりにして、思わず硬直してしまう。


基紀君に抱き着いたその女の子は、私より身長が低くて、もしかしたら百五十センチないかもってくらいに小柄な子だった。
染めてるのか地毛なのか分からない栗色の髪の毛を、耳の高さでちょこんと二つ結びにしている。
目がくりっとしていて、肌もつるつるで、変な意味じゃないけど小学生みたいに可愛い。


「男女三人ずつで自由班とか酷くない⁉︎ 担任鬼じゃない⁉︎ 杏(あん)、班組める様な人いないよ!」

「はいはい。とりあえず落ち着け」

「基紀ーっ! 同じ班になってー!」

「はいはい」


ハイテンションな女の子と、その対応にやけに慣れてる様子の基紀君の様子をぽかんとしながら見つめていると、近田君が私の隣にやって来て、そんな二人を指差す。


「あいつは、伊川 杏子(いがわ あんず)。俺と基紀と同中で、基紀と伊川は幼馴染み」

「へえ、幼馴染みなんだ……付き合ってるのかと思った」

「そういう話は全然ない。
さっき基紀が、クラスにぼっちがもう一人いるみたいなこと言ってただろ。
伊川はさ、悪い奴じゃないんだけど、ちょっと子供っぽいところがあって、中学では結構浮いてたんだよ」


そうなんだ……と呟くように返す。


見た目だけじゃなくて、中身も子供っぽいってことなのかな?


あと、もしかしたらだけど、基紀君かっこいいから、伊川さんが基紀君に抱き着いてるところを嫉妬した女の子たちと仲良くなれなかったっていうのもあるかも……。
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