切ない春も、君となら。
その頭、というのは私の金髪のことを言っているのだろう。

私は中学生の時から金髪に染めている。
今みたいな反応への対策として、〝頭のてっぺんがプリンになってたら教えてね!〟というリアクションも頭の中では考えてはいたものの、実際にそれを口にする度胸もユーモラスも私は持ち合わせていなくて、「はは……」と苦い笑みを零すのみだった。その笑みすら、彼は見ていなかったけれど。


しばらくすると、彼の席に別の男の子がやって来た。

「よう、総介(そうすけ)! 同じクラスだな! よろしく!」

そう話し掛けられた隣の席の彼は、明るい声で「おう、よろしくな!」と返していた。

さっき私に向けていた冷ややかな表情とは打って変わって、明るくて分かりやすい笑顔だった。


どうやら隣の席の彼は、総介君という名前らしい。
さっき見た、氏名が書かれた座席表によると、確か〝竹入〟の隣は〝近田(ちかだ)〟だったはず。

近田 総介君。それが、これからしばらく毎日隣の席で顔を合わせることになる彼の名前のようだ。

……いや、顔は合わせないかも。さっき、物凄く冷たい視線を向けられながら〝何だその頭〟と言われてから、彼は一回もこっちを見ない。

友達になんて、なれそうにないなぁ。

まあ、仕方ないよね。こんなに派手で近寄り難い格好をしている私が悪いんだ……。

そのまま一人でぼーっとしていると、担任の先生がやって来て、入学式を行う体育館へと向かうことになった。

そして、その後も私に話し掛けてくる人は誰もいない。
冷たい視線を受けている以上、私の方から周囲に明るく話し掛けることも結局出来なくて、高校に入学してから誰とも会話をしないまま、三日が過ぎた。
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