切ない春も、君となら。
「杏。大丈夫だ」

基紀君が親指を立てながら伊川さんに言う。

「お前と同じく、班決めに困っている女子がそこにいるぞ」


突然話を振られて、ドキッとする。


肩に力が入って、思わず姿勢をピンと正してしまう。


でも、これはまさに友達を作るチャンスじゃない⁉︎ しかも女友達!


緊張で身体をかちこちさせながらもガタッと席から立ち上がると、頑張って声を振り絞り、


「わ、私、竹入 春日です! よ、良かったら私と同じ班にーー」


と言い掛けるけど。


「えー。杏、こんな金髪と同じ班やだ」


……見事にはっきり拒否られました。



「おい、杏。言葉には気を付けろっていつも言ってるだろ」

「えーだってー」


いや、いいんだ……私なんかと同じ班になるの嫌だよね、はは……。
〝こんな金髪〟って言われたことにはショックを受けたけど。


すると今度は、さっきまで会話に参加していなかった堀君が突然「あ、松岡(まつおか)さん!」と声をあげる。

堀君の視線の先に目を向ければ、そこにはとっても美人な女の子がこっちに振り返って立ち止まっていた。


「あ、堀君」


顔だけじゃなくて声も綺麗。

胸元より少し長い位の黒髪ストレートのロングヘアー。
まつ毛が長くて、色白で、目鼻立ちが整っていて、超美少女だ。


「あの子は松岡 菜々子(ななこ)さんだ。席が近いからたまに話すんだけど、堀と同中らしい」

いつの間にか私の隣に現れた基紀君が、私にそう説明してくれる。
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