切ない春も、君となら。
そして、それを見た基紀君が固まる。

何も言わない彼を不思議に思ったのか、近田君と堀君も、基紀君の両隣から私の成績表を覗き込む。

そして、二人は声を揃えて

「学年一位⁉︎」

と驚いた。


「そうだよー。私、頑張ったんだから!」

元々勉強は嫌いじゃないけど、高校生活で最初の中間テストで良いスタートダッシュが切れる様に夜遅くまでテスト勉強を頑張った!


堀君は「そうなんだ。凄いね」と褒めてくれるけど、基紀君は「春日は絶対アホだと思ってたから何かショックだ……」と失礼極まりないことを言っている。


そして近田君は。


「ち、近田君?」

無言で、無表情で、私の手元をじっと見つめるのみ。

名前を呼ぶと、ようやく「それ、嫌じゃなかったらちょっと見せてもらってもいい?」と聞いてきた。

それ、というのは成績表のことかな? さっきからこれ見られてる気がするし。


いいよ、と答えると、彼は私の隣に立ち、突然時間距離まで詰めてくる。


ドッキン、と心臓が痛い位に跳ねる。
ど、どういうこと⁉︎ 何、この距離⁉︎
基紀君と堀君も驚いた顔でこっちを見てる。
近田君だって恥ずかしがり屋で照れ屋な性格なのに! 何で突然こんなーー


「……数学と化学は俺の方が上だな。やっぱ英語か……あとは……」


ん?

彼は私の隣で、何やら分析を始めた。

どうやらただ単に、次回の期末テスト対策の為に私の点数を知りたかっただけの様だ。

照れ屋な彼がこの至近距離を気にしないのは、今彼に見えているのが私ではなく、私の成績表だけだからね……。


「ち、近田君は何位だったの?」

「クラスで三位。学年で四位。でも次回は一位狙ってるから」

私の質問にそう答える時も、目線は成績表。
もう! 私のことはこんなに緊張させておいて、こんなの酷いよ!
近田君、私のこと天然って言ってたけど、自分だってそうなんじゃないの⁉︎


しばらくして、近田君は私から離れた。
ほっとした様な、ちょっとだけ残念な様な……。
< 51 / 160 >

この作品をシェア

pagetop