切ない春も、君となら。
「え?」

弾かれた右手がじんじんとする。


立ち止まって振り向いた松岡さんは、やっぱり私と目は合わせない。



「ご、ごめん」

松岡さんが怒ってる理由は分からないけど、急に腕を掴んでしまったのは申し訳なかったし、謝る。



「何か、松岡さんの様子がいつもと違う気がしたから気になって」


私がそう言うと、松岡さんは目を合わさないまま、



「……いつもって何? 私の何を知ってるって言うの?」

「え?」

「大体、そんな理由でいちいち話し掛けてこないでよ。

私達、


友達でも何でもないんだから」



そう言って彼女は教室へ入っていった。




……私、自惚れてたのかな。


松岡さんと最近良い感じとか、勝手に思ってた。


でもよく考えてみれば、お互い名前じゃなくて名字で呼び合ってるし、連絡先も知らないし。


確かに、友達だなんて言えない関係だよね。



だけど、




だけど私はーー。
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