切ない春も、君となら。
今までの私だったら。
きっと、こんなにも明らかに拒絶されている相手を自分から追いかけるなんてこと、しなかったし出来なかった。
今だって、怖い。
だけど。
高校生になってから、ほんの少しだけど自分が変われている気がしていて。
今まで、私は私のことをずっと否定していた。
弱虫で、一人ぼっちで、勇気のない自分が嫌いだった。
だけど、そんな私と杏ちゃんは友達になってくれて、こんな私のことを近田君はいつも気に掛けてくれる。
私が嫌いな私のことを認めてくれる人達がいる。
それなら、私も変わりたい。
自分のことを好きになれる様に頑張りたい。
自分が相手に伝えたいこと、ちゃんと全部言いたい。
それに、
それに私はーー……。
「松岡さんっ!」
階段の踊り場で、何とか彼女を呼び止めることが出来た。
辺りに人の気配はちょうどない。
彼女は私に背を向けたままだったけど、私は話を続ける。
「あ、あのね、ちょっと話しがしたくて」
「……」
こっちを向いてくれないから、不安と緊張が混じってドキドキしてしまう。
自分の心臓の音が分かりやすく耳に届く。
だけど。
「私……
私は、松岡さんと友達になりたいと思ってる!」
この瞬間、松岡さんがどんな顔をしたのかは分からない。
でもこれだけはきちんと伝えたかった。
ハイキングの時、凄くたくさん話した訳じゃないけど、同じ班になって、会話しながら山を登って、とても楽しかった。
私を待ってた訳じゃないのは分かってるけど、他の友達と先に登っていったはずの松岡さんが、立ち止まっていて途中で待っててくれていたことも嬉しかった。
基本は班行動しなきゃいけないからって言う、真面目なところも好きだなって思う。
だから、拒絶されると悲しいよ。
近付きたいと思うのは私だけ?
もう少し話しがしたい。
「松岡さん……?」
何も答えてれないから不安になって、後ろから彼女の腕にそっと触れる。
でもその瞬間。
「だから触らないでって言ってるでしょ!」
と、またしてもその手を払われる。
振り向いた彼女は、お昼休みの時とはまた違い、明らかに怒った顔をしていた。