切ない春も、君となら。
うわぁー恥ずかしい!
今まで自分の気になる男の子の名前を誰かに言ったことなんてなかったけど、こんなに恥ずかしいものなの⁉︎


すると。


「えっ、そうなの⁉︎ 近田君かぁー! 意外!」

松岡さんは、驚いた様な表情で、でもどこか興奮した様子でそう言ってくれる。


「近田君のどこが好きなの?」

「へ⁉︎ ど、どこだろ〜……。ここ! っていうのがある訳じゃなくて、次第に気になっていった感じかな……」

「うんうん」

「わ、私、見た目こんな感じじゃない? だから高校に入学してからも皆から白い目で見られてて、友達も出来なくて。近田君にも最初は嫌われてたみたいなんだけど、彼はすぐに私の中身も見てくれたんだよね……」


真面目で、厳しくて。あと照れ屋で。
そんな彼の、ちょっと分かり辛い優しさを思い出して、胸がきゅぅってなる。


「まあ、基紀君も割とすぐに私の中身を見てくれたけど、あの人はちょっと失礼過ぎーーって、松岡さんどうしかした?」

ふと松岡さんを見ると、何だか表情が暗い。たった今まで明るい顔で私の話を聞いてくれていたのに。急に眉を下げて俯いてしまった。私、また何か誤解させる様なこと言ってしまっただろうか?

すると。


「……ごめんね」

「え?」

「私も竹入さんのこと、見た目で判断してた」

彼女は俯いた顔を上げ、私と視線を合わせる。
切なげな瞳が、私のことを今度はじっと見つめる。
< 60 / 160 >

この作品をシェア

pagetop