切ない春も、君となら。
「私の両親少し厳しい人で、昔から友達は選べって言われてきたの。
だから昔から、不良っぽい子とはかかわらない様にしてきたんだけど、高校に入学して、同じクラスに金髪の不良っぽい子がいて、嫌だなって思った。
ハイキングで同じ班になった時も、本当は嫌だった」

そうだよね。こんな金髪と仲良くしたいなんて普通思わないよね。ハイキングの班が決まった時も、松岡さんは明らかに嫌そうな顔してたけど、杏ちゃんも露骨に嫌がっていたし、そう思うのは無理もない。ご両親にそういう風に言われて育てられたのなら尚更。


「でも、違ったね」

「え?」

「ハイキングの時に話した竹入さんは、髪の毛は金髪だけど、不良なんかじゃなかった。真面目で優しそうな子だなって……友達になれるかもしれないって、本当は私も思った。
それなのに、テストで一位を取られたショックとか、基紀君に構われてる羨ましさとかで嫌なこと言ってしまってごめんなさい。
何も勉強してない人が一位を取れる様なテストじゃなかったことは、私が誰よりも分かってるはずなのに」


鼻の奥がツンと痛むのを感じた。

こんなに素敵な子が、私なんかに対してこんなこと言ってくれるなんて。


「ううん、松岡さんは何も悪くないよ。私だって、高校の入学式にこんな金髪がいたらかかわりたくないよ」

「え? じゃあ何で髪染めてるの?」

「それは、まあ……」

莉菜達とのことはまだ言えなくて、曖昧に誤魔化してしまった。

でもいつか。

いつか何でも話せる友達になれたらいいなって。


だから。



「な、名前で呼んでもいいかな?」


緊張で手汗が滲む。

でも〝松岡さん〟って呼ぶのはあんまり友達っぽくない。

すると。


「勿論だよ」

松岡さんはまた笑顔でそう答えてくれた。

さっきまでは、まだどこかぎこちない感じの笑顔だったけれど、この笑顔は、松岡さんの本当の笑顔なのかなって感じた。
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