切ない春も、君となら。
「竹入のことを信じているのは、俺だけじゃありませんよ」
近田君の言葉に、私と校長が「え?」と口を揃えて首を傾げると、開けっ放しだった校長室の扉の奥、廊下の方からバタバタバタと何人かの足音が聞こえる。
「わっ、杏、押すなよ!」
「じゃあ早くそっち行ってよ!」
賑やかでーーそして聞き覚えのある声達と共に姿を現したのは、杏ちゃん、基紀君、菜々ちゃん、堀君だった。
四人も、さっきここへ来た時の近田君と同じ様に息を切らしていた。
そして。
「はるはるが人に怪我なんかさせる訳ないでしょ、こーちょーのバカ!」
「万が一怪我をさせたことが本当だとしても、竹入さんは理由もなくそんなことする人じゃありません」
杏ちゃんと堀君が、真っ向から校長に意見をぶつけてくれる。
基紀君も、
「つうか総介が一人でカッコつけようとしてることの方が問題だと思うね、俺は」
なんて冗談言ってへらっと笑った。
そして。
「私も、竹入さんはそんなことする人じゃないって知ってます。この件については何か誤解があると思います」
菜々ちゃんが凛として校長にそう伝えると、
「松岡さん、君までそんなことを……」
と言って、右手を額に充てる。
そして。
「松岡さん。傷害事件を起こす様なクラスメイトと君が友人だなんて知ったら、君のお父さんはさぞガッカリしますよ」
「父は関係ありません。竹入さん……春ちゃんは、私が自分で選んだ友人です」
校長と菜々ちゃんは、私を間に挟んでそんな会話をする。
この会話の意味がよく分からない私達に対し、堀君が「松岡さんのお父さんは、校長先生と古くからの知り合いなんだ」と教えてくれる。
そうか。そう言えば菜々ちゃん……お父さんが厳しい人で、友達は選べって言われているんだってことを前に教えてくれた。
でも、そんなに厳しいお父さんなら、私みたいな派手な人間が菜々ちゃんと親しくしていることすら気に入らないだろう。
菜々ちゃんはその上で私を庇ってくれている。
どうしよう。
皆にこれ以上甘えたらいけないと思う。皆に迷惑を掛けてしまう。
皆の気持ちはもう痛い程に受け取ったよ。
信じてくれてありがとう。
それだけで充分……
充分……
「竹入」
不意に、近田君に名前を呼ばれる。
「お前が思ってることをちゃんと言え」
真っ直ぐな眼差しでそう言われる。
私が思ってること。
思ってることは……
「わ、私……」
皆に信じてもらえて、それだけで充分だったはずなのに
「私は
何もしてませんっ!」
近田君に言われた通り、自分の思いを吐き出した。
近田君の言葉に、私と校長が「え?」と口を揃えて首を傾げると、開けっ放しだった校長室の扉の奥、廊下の方からバタバタバタと何人かの足音が聞こえる。
「わっ、杏、押すなよ!」
「じゃあ早くそっち行ってよ!」
賑やかでーーそして聞き覚えのある声達と共に姿を現したのは、杏ちゃん、基紀君、菜々ちゃん、堀君だった。
四人も、さっきここへ来た時の近田君と同じ様に息を切らしていた。
そして。
「はるはるが人に怪我なんかさせる訳ないでしょ、こーちょーのバカ!」
「万が一怪我をさせたことが本当だとしても、竹入さんは理由もなくそんなことする人じゃありません」
杏ちゃんと堀君が、真っ向から校長に意見をぶつけてくれる。
基紀君も、
「つうか総介が一人でカッコつけようとしてることの方が問題だと思うね、俺は」
なんて冗談言ってへらっと笑った。
そして。
「私も、竹入さんはそんなことする人じゃないって知ってます。この件については何か誤解があると思います」
菜々ちゃんが凛として校長にそう伝えると、
「松岡さん、君までそんなことを……」
と言って、右手を額に充てる。
そして。
「松岡さん。傷害事件を起こす様なクラスメイトと君が友人だなんて知ったら、君のお父さんはさぞガッカリしますよ」
「父は関係ありません。竹入さん……春ちゃんは、私が自分で選んだ友人です」
校長と菜々ちゃんは、私を間に挟んでそんな会話をする。
この会話の意味がよく分からない私達に対し、堀君が「松岡さんのお父さんは、校長先生と古くからの知り合いなんだ」と教えてくれる。
そうか。そう言えば菜々ちゃん……お父さんが厳しい人で、友達は選べって言われているんだってことを前に教えてくれた。
でも、そんなに厳しいお父さんなら、私みたいな派手な人間が菜々ちゃんと親しくしていることすら気に入らないだろう。
菜々ちゃんはその上で私を庇ってくれている。
どうしよう。
皆にこれ以上甘えたらいけないと思う。皆に迷惑を掛けてしまう。
皆の気持ちはもう痛い程に受け取ったよ。
信じてくれてありがとう。
それだけで充分……
充分……
「竹入」
不意に、近田君に名前を呼ばれる。
「お前が思ってることをちゃんと言え」
真っ直ぐな眼差しでそう言われる。
私が思ってること。
思ってることは……
「わ、私……」
皆に信じてもらえて、それだけで充分だったはずなのに
「私は
何もしてませんっ!」
近田君に言われた通り、自分の思いを吐き出した。