切ない春も、君となら。
下手に私に接触して、警察沙汰になるとマズいのは莉菜の方だ。
それがあってのことだろうけど、しばらく莉菜からの連絡はなかった。
泉も同様だった。普段から、泉が単独で私に近付いてくることはないのだけれど。
なので、あれからしばらく、比較的穏やかな日を過ごしていた。
期末テストの勉強も集中して出来た。
そのお陰もあって。
「じゃーん。今回も学年一位でしたーっ」
朝のホームルーム後、私は成績表を右手でひらひらと揺らせながら浮かれていた。
「私はまた二位だぁ。次はもっと頑張ろうっと」
明るくそう言う菜々ちゃんとは違い、近田君は分かりやすく落ち込んでいる。
「総介、成績表見ーせて! おっ、学年三位じゃん! すげ!」
「凄くない。一位を狙ってたんだよ、俺は」
落ち込んでいるのはそういうことか。
でも、私と菜々ちゃんは帰宅部だから放課後の時間が割とあるけれど、近田君は部活をやりながら学年三位なんだから私達より凄いと思う。
「ていうか学年一位から三位が揃ってるって、このクラス凄くね? なあ杏?」
「だねっ。基紀は下から何番だった?」
「下から数えた方が早いって決め付けてんじゃねーよ!
それよりさ、皆!」
基紀君の言葉に、私達は彼に注目する。
「明日から夏休みに入る訳だけど、二十五日の花火大会の集合場所と集合時間決めようぜ!」
そうだった、花火大会! ずっと楽しみにしてたんだよね。
すると杏ちゃんが。
「ねー、女の子は浴衣着て行こうよー!」
そう言うと、基紀君も「おっ、それいいな」と同意する。
浴衣……。