ラブソング -詩-





「チィ君、何聞いてんの?」

「ん?10年くらい前の歌」

「10年!?」

「そう。でもめっちゃ名曲でさ、ヤバいよ」

「え~、聞きたい」

「聞け聞け」


チィ君がイヤホンを片方貸してくれる。
曲は完ぺきなラブソングだった。


「珍しいね、ラブソング…」

「深夜の番組で一瞬流れて、なんか耳から離れなくなった」


その曲は、昔の名曲とかってタイトルのテレビ番組で聞く曲だった。

サビ以外を聞いたのは初めてで、愛のこもりすぎたそのラブソングは切なくて温かくて涙が出た。


「真弥、泣いてんの!?」

「いや、なんか…泣けて来た」

「なんで?」

「たくさん嘘ついて、それでも君の側から離れられなくて、だから僕は君にだけ愛を歌おう」

「…うん」


嘘。
チィ君についてた嘘。
私は最低な女だ。

それでもチィ君は私に愛してると言ってくれる。


「真弥は嘘つきじゃない。それに、俺はお前に救われた」


優しく笑って、頭を撫でてくれる。
私は、ただのヤキモチ女だ。
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