candy×candy
 あれからもう9年も経った。
 
 子供の頃の些細な記憶が、どうしても忘れられない。

 きっとそれは、些細な記憶じゃないから。

 今思えば、あれが私の初恋だったんだと思う。

 幼い私の幼い恋。

 名前も顔も知らないお兄さんを「飴屋さん」と呼んで、今も密かに探してる。

 どうしても顔を見て、話してみたくて。

 きっと「飴屋さん」は私のことを覚えてないのだろうけど。
 
 コーヒー飴を取り出して、私の頭を撫でたあの温度が、染み付いて離れない。

 もう一度、会いたい。

「どこにいるのかな...」

「飴屋さんの話?」

 突然降ってきた声にビックリして肩が揺れ、イヤホンが外れた。
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