candy×candy
 視線をあげると短いショコラブラウンの髪を靡かせた小柄な女の子が私を見つめている。

「こんなとこにいた。探したんだから」

「ごめん。なんか用あった?」

「そういう訳じゃないけど」

 そう言って私の隣に腰を下ろし、空を見上げる。

 彼女は葉山 梓(はやま あずさ)。

 私の幼なじみで、ハーフっぽい顔立ちの綺麗な子。

 お人形さんのような、という言葉がぴったり当てはまる。

 いつも冷静で判断力に長けており、少し毒舌。心を開いた人にはとても素直だ。

 そんな彼女は私の隣に座り、お菓子を取り出した。
 
 私とは違う、梅味のソフトキャンディ。
              それを口に放り込んで、美味しそうに咀嚼する。

「あんた、よく飽きないね」

「うん。これしか思い出せるものがないから」

「飴屋さん?」

「...うん」

 梓には飴屋さんの話はしてある。

 それ以外にも、気になる人の話とかは隠さず話している。

 本当に心置き無く話せる数少ない親友。

「...探してんの?」
 
「私を?」

「なんで亜子が亜子探してんのよ。飴屋さん」

「あー...うん」

 なんとも曖昧に答えた私を、しかし梓は言及しない。 
 
 その理由も分かってるから。
 
 確かに、飴屋さんは初恋の人。
 いつか会ってみたい。

 けど、私だってずっとそこに留まってる訳じゃない。

 好きな人くらいいる。

「あ、終わった」

 梓の声と昼休みのおわりを告げるチャイムが重なった。

 私はその好きな人に会いに行こうと屋上を出た。 
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