candy×candy
 三角形の合同条件。

 小野先生は黒板に少し癖のある字でそう書いた。

 丸みのあるその文字が、可愛らしくて好き。

 数学はプリントが多いので、ノートはとらなくてもいい。

 プリントの内容を見てみるけど、難しそう。

 数学の中でも図形は大の苦手だ。

 しかも期末テストの範囲なのだから困ってしまう。

 一応、成績は上位の方だけど、今回は危ないかも...

「じゃあ、これと全く同じ三角形を書くにはどうしたらいいかな?ちょっとプリントに書いてみましょう」

 そこまで考えたところで先生の声が耳に入り、我に帰る。


 授業は進んでて、慌ててプリントの裏側を見る。


 自分でも工夫しながら書いていくけど、あと1つが分からない。


 すると、


「どこかわからない?」


 いつもは教壇で聞くだけの声が頭上から降ってきた。

 そっと顔をあげると、小野先生との距離が思っていた以上に近くてびっくりした。

 瞬時に騒ぎ立てる心臓をきゅっと握って、ぼそぼそと喋る。


「あの、あと1つが分からなくて」

「うん、そっか」


 先生はそう言うと私の横に回り込み、じっとプリントを見つめる。


 緊張と恥ずかしさで脳味噌が沸騰しそうだ。
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