またこの場所で…
手を引かれたまま、入ってしまった特進クラスの棟。
なんか雰囲気が、気のせいかもしれないけど違う気がする。
「やっぱり、引き返さない?」
「何言ってるの、その生徒手帳返さなきゃいけないんでしょ?」
「は、はい……」
そうだよね。
私がいつまでも妃波くんの生徒手帳を持ってるわけにはいかない。
右手に持っていた妃波くんの生徒手帳をギュッと握りしめる。
「えっと、2年生のクラスは……」
周りを見て探す一葉ちゃんと一緒にそのクラスを探す。
「あ、あれじゃないかな?」
生徒手帳に書かれたそのクラスの札を見つけた私は、そっちの方を指さす。
「よし、じゃあ行ってらっしゃい!」
「えぇ!?一葉ちゃんは?」
「拾ったのは美織でしょ?自分で返さないと。私はその人のこと知らないし……」
確かに、そうなんだけど。
「付いてきてね」
「もう、わかったから」
「……美織?」
「……え?」
私と一葉ちゃんがヒソヒソと話していると、近くから聞こえてきた私を呼ぶ声。
低くて男らしいその声は、初めて聞く。
「……っ」
声のする方へ振り向いて、私は一瞬、息をするのを忘れた。