またこの場所で…
Place.2
彼の背中《side一葉》
ここはとあるスイミングスクール。
「…いち!に!さん!……」
聞こえるのは水を打つ音と体操をする掛け声。
時々コーチの怒声も聞こえてくるけど。
背中を押されて柔軟体操をしながらガラス張りの壁から外を眺める。
「…ん……ちゃん……お姉ちゃん!」
「…え?何?」
「何?じゃなくて!ちゃんとあたしの話聞いてた!?」
「あれでしょ?水速くんのことでしょ?」
「水速くんじゃなくて、三笠くん!
もう!全然聞いてないじゃん!」
私の背中を押していた妹の二花(にか)は、怒って背中を力いっぱい押してきた。
水泳をやってて元々体は柔らかいから痛くもなんともないけど。
「ごめんって!それで?三笠くんがどうしたの?」
聞いてほしそうにしてる二花に聞けば、二花は待ってましたと言わんばかりに目を輝かせた。