またこの場所で…
沈黙の間、妃波くんの背中が怖くて見られなかった。
私はつい俯くと、妃波くんの足が動いてこっちを向いたのが分かった。
妃波くんがこっちを向くのに合わせて私も顔をゆっくりと上げる。
妃波くんはいつもと変わらない笑みを浮かべていた。
「そうなんだ。ちょっと知り合いが入院しててね。
お見舞いに行ったんだ」
「あ、そ、そうなんだ!妃波くんも美織も大変だね!」
それ以上聞くな。
妃波くんの笑みはその意味が込められている気がして、私はこれ以上何も聞けなかった。
来週の大会に楓月くんが観に来てくれることになって、美織に嬉しい報告をしたいのに心はモヤモヤしていた。
実際に美織に楓月くんが観に来てくれることを報告したけど、美織の反応がどうだったか覚えてない。
それくらい妃波くんのあの笑みが頭から離れなかった。
それでも放課後は気持ちを切り替えて大会に向けてがむしゃらに泳いだ。
妃波くんのあの笑みを頭から消すように……ーーーー