またこの場所で…
小さな顔写真のその表情は、とてもぶっきらぼうだけれど、間違いなく私とさっきぶつかったあの人だ。
えっと、名前は……
「妃波、龍(ひなみ りゅう)?」
なんか見覚えのある制服だと思えば、同じ高校だし、クラスを見れば同じ2年生だけれど、私の学力とは程遠い特進クラス。
頭良かったんだ、あの人。
「って、これ届けなきゃ……!」
そう慌てて顔を上げて、さっきの人が向かって行った方を見てみたけれど、時間が経ちすぎていたせいで、その姿はどこにも無かった。
「これ、どうしよう……」
妃波くんに渡せなかった。
でも、同じ高校なら……また明日渡せばいいよね?
妃波くんがどこにいるかなんて、全くわからない私は、今日だけ預かっておくことにした。
「生徒手帳だし、無くても困らないよね?」
うん、きっと大丈夫だよ。
そう自分に言い聞かせて、家に帰ることにした。