またこの場所で…
「美織ー!」
顔がはっきりと見える距離で名前を呼ばれ、私は答えるように大きく手を振った。
「ごめん、遅れちゃって」
「ううん、大丈夫だよ。まだ大会始まってないし」
今の時刻は8時40分。
いい場所は空いていないかもしれないけど、席はどこかまだあるはず。
「本当ごめん。こいつが遅くてさー」
こいつ、と裕くんが視線を向けた先にいるのは、妃波くん。
なんか、どこか前会った時の雰囲気と違う気がするんだけど……
「僕のせいにしないでよ。遅れてごめんね、美織ちゃん」
「ううん、大丈夫だよ?じゃあ、行こっか」
口を開いた妃波くんはいつも通りで、私の気のせいだったかもしれない。