またこの場所で…
会場内に入ると、選手だったりその応援に来た家族や友人、それなりに大きい大会だから、報道陣もそこには沢山いた。
「すごい人だね」
私とは違って初めて来る裕くんと妃波くんは、物珍しく周りを見渡していた。
私の好きな席は、コースの真ん中の方ではなくて、スタートとゴールの方だ。
いつも私がそこに座っていることを知っている一葉ちゃんは、必ずスタート前に後ろを振り返って、親指を立てて合図をする。
そしてゴールした時にはまた私の方を見て、勝利の拳を高くあげながら笑顔を向けてくれる。
立ち向かうかっこいい背中と、ゴールした瞬間のキラキラした笑顔を見られるこの席は、私の大好きな席。
何も知らないふたりを、私は当たり前のようにその場所へと案内した。