またこの場所で…



待って?



普通に見送っちゃったけど、今って裕くんとふたりきり、だよね?



急に意識し始めちゃって、心臓が大きく鼓動を打つ。



聞こえてないかな、このドキドキ。



何もしていないのに、耳まではっきり届くドキドキは、外まで漏れていないか心配になる。



そんな私の隣に座る裕くんは、プールの方を見つめたまま、気にしていないようだった。



「懐かしいな、このプール」



話を切り出したのは裕くん。



「そうだね。一緒に、沢山遊んだよね」



大会が行われているこの市民プールは、この街に唯一の大きなプール。



まだ私たちが小学生の頃、仲良しの私たちはよく一緒に遊びに来ていたっけ。



「馬鹿みたいに真冬に来たりもしてたよな」

「それは、裕くんがどうしてもって誘うから」

「あ、そうだっけ?」

「うん、そうだよ」



……懐かしいな。



当たり前のように隣に裕くんがいて、当たり前のように一緒に笑って過ごしていたあの時間。



記憶が曖昧になりがちな小学生の頃の記憶なのに、それははっきりと覚えてる。


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