またこの場所で…
その時、一葉ちゃんを呼ぶ声が聞こえた。
時間ギリギリなんだろう。
「ちゃんと観てるからね」
「うん!頑張ってくる。
ありがとう!」
「行ってらっしゃい」
パタパタと自分を呼ぶ声の方に駆けていく一葉ちゃんを見送った。
その後ろ姿はさっき見た緊張に震えた姿ではなく、とても凛とした姿。
「あんな風に、楽しそうに出来ることがあるのは羨ましいな」
観ると言った手前、観客席に行かないといけないため踵を返しながら、思わず小さく呟いてしまったその言葉は、誰に聞かれることもなく消えていった。