またこの場所で…
二花はそれを合図にゆっくりと目を閉じた。
二花が目を閉じたのを確認して私も目を閉じて、二花の額に自分のをくっつけた。
「…きっとたくさんの観客がいるけど、会場にいる全員を二花の虜にさせるの。
私が一番美しいんだって、綺麗だって見せつけてやるのよ。
…大丈夫。二花なら飛べるよ。」
二花の競技前の恒例儀式。
二花はこうやって私と額をくっつけ合うと落ち着くらしい。
二花より先に目を開けると、二花はまだ目を閉じていた。
沈黙の時間が数分流れた後、二花はゆっくりと目を開けた。
その表情はさっきの泣きそうな表情じゃなくて競技者の目つきだった。
その表情を見て私は安心して二花の手を離した。
「さ、いってらっしゃい!」
「行ってくるね!」
最後に二花とハイタッチをして、二花は会場へと歩いて行った。
二花の競技を見たかったけど、自分のリレーがあるから別会場へと移動した。