またこの場所で…



「…それが問題なんだよ~…」



アップをしながら何回目か分からないため息が出る。



リレーとかの団体競技はみんながいるからそれほど緊張せずに泳げる。



でも個人となると話は別。



個人は自分との戦いになる。



孤独が嫌いな私には合わない競技。



いつも本番が近くなるとすごく緊張して毎回逃げそうになる。



一回吐きそうになったこともある。



でも個人で勝たないと、自分には勝てない。



そうコーチに言われて自分に勝つためにも個人は必ず出場している。



自分に勝たないと。今度こそ勝つんだ。



胸に手をあてて自分にそう言い聞かせる。



自分に暗示をかけていたせいで、背後から近づいてくる足音に気づかなかった。



「一葉ちゃん?」

「きゃっ!?」

「ごめん、驚かせた?」



いきなり肩に誰かのぬくもりを感じて驚いた。



ゆっくりと背後を振り返ると、そこにいたのは妃波くんだった。



妃波くんの姿を確認して安心する。



「だ……大丈夫」

「そう?ならいいけど……」



ほんとは緊張といきなり現れた妃波くんに驚いて大丈夫じゃないけど、心配させてしまうのも申し訳なくて大丈夫と返事をした。



妃波くんはどうして…


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