小さな魔女と真実のKiss

「ここへ来たということはなにかあるのだな？」

女の頬に残る涙の後を見たのかわからないが、男は女にそう問いかけてきた。

女は不気味な笑みを浮かべている男にはこれまで起こったことを話したくなかった。正確に言えば、男の不気味な笑みを見て話す気が失せてしまったのだ。

「汝(なれ)が話したくないと申すのならば、ここが貴様の墓場だ。」

そう強気な口調で言う鏡の中の男に対し、女は少し恐怖のようなものを感じた。

「話します。話しますので、どうか命だけはご勘弁ください。」

おびえた様子の女に、鏡の中の男は面白そうに笑い声をあげながら言った。

「安心しろ。残念ながら我に魂を操る能力は備わっていない。汝の気が向いたらゆっくり話すといい。」

鏡の中の男はそう言ってニコリと優しい笑みを浮かべその場へ座り込み女が話をするまでひたすら待った。

鏡の中の男の取る行動に少し安心し、女は大きく深呼吸をしてからゆっくりと話を始めた。