十二月の初恋戦争



平日のせいもあってか、住宅街の人通りは極端に少なかった。


すごくありがたい。


不登校というのは肩身の狭い生き物だから。


耳をすましても話し声ひとつなく、辺りはがらんとしていた。


しかし、この町にひと気がないのは、今に始まったことじゃなかった。



ここ天鈴(あますず)町は人口一万人にも満たない小さな田舎町だ。



これといって名物などもなく、観光客と思しき人でさえ、僕は見たことがない。



僕自身、天鈴町を生まれ育った故郷として贔屓(ひいき)目に見ても、きっと「地味な町だ」というに違いないだろう。



あと三十年も経てば、この町には誰もいなくなるんじゃないか、と僕は思う。



……その頃の僕はどこで何をしているんだろうか?




まだここにいるのだろうか?



それともすでにここを離れているのだろうか?





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