十二月の初恋戦争


このあたりが"天鈴のはずれ"といわれているのを、僕は一度だけ聞いたことがあった。



町民の話をたまたま盗み聞きしただけだから、その理由までよくは知らないけど、なんとなく予想はついた。



"天鈴のはずれ"



ようするに、天鈴町の端にあって中身のない"すっかすかな場所"ということなのだろう。



とはいっても、そもそも天鈴自体に何もないから、僕にしてみれば"あたり"も"はずれ"もないんだけど。



家のひとつくらいはあってもよさそうなのに、あるものといえば古びた小屋が一つくらいだった。



もちろんそこにも住んでいる人間はいない。



そんなわけで、天鈴のはずれという場所には誰も好んで寄り付こうとはしなかった。



それもそうだ。来る理由がないのだから。


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