ラスト・ロマンティカ
「だから何だ。俺は興味がねぇものにはとことん興味がねぇ」
 それが普通である。
 しかし僕がなにかを忘れているというのはどういう事であろうか。
「まぁ言うとは思いましたけど」
 司教はやけに人あたりのよい笑顔。むしろ気色悪いぐらいに。
 とりあえずビーズアクセサリーと作業道具を片付けておく。
「あ、ちょっと待てガキ!」
 いつの間にラポニールが僕の目前に来ていた。
「これはテメェが作ったのか?」
 作ったばかりのビーズアクセサリーを奪われる。
「できはいいんだが……なにも感じないな」
 やれやれといった感じで首に着ける。矛盾しすぎだろ、この娘。
「感情がないってカンジだなー。これだと俺の伝達能力も無効なんじゃねぇか?」
 意味のわからない事を。
「その可能性はありますね。私の恩赦能力は効果がありましたけど」
「は?ガキに何を与えたっつーんだよ」
 僕も司教に何かを与えられた覚えは無い。強いて言えばビーズと作業道具。
「世間一般常識と言葉。ついでに学習能力と記憶力を。2人分もね」
「2人分?ジジィ自身の知識じゃなくて誰かのを?」
 瞬間、司教はこれでもかというほどの清らかな笑みを見せた。
 普通の人間ではこんな綺麗な笑顔は出せないかもしれない。
「ええ。先ほど話題にのぼったジョージとアンドレ2人分の」
 それを聞いたラポニールの顔つきが変わった。
 それを確認した頃には目の前にある長椅子が使いものにならないぐらいに壊されていた。
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