秘密ゲーム
次の日の朝。

あまり眠れなかった。

重く感じる体を無理やり起こして、

学校へ行く準備を始める。

今日は少し早めに行って教室で寝ようかな。

いつもより早く準備を終えて、

学校へ行く。

「お母さん!いってきます!」

いつものように返事は返ってこない。

私が小学3年生のときに親が離婚をした。

私は、母親に引き取られた。

それからずっとお母さんは働いてばかり。

私の高校への進学は、

本当は認めてもらえなかった。

「お金もないのに進学?!何考えてるの!」

「お願い!高校だけは行かせてほしい…!」

「働きなさい。お母さんも疲れてるの…

お願いだから、進学なんて考えはやめなさい。」

中卒なんて絶対に嫌だった。

私は無理にでも高校だけは行きたかった。

それでもお母さんはいつも、

朝から晩まで仕事ばかり。

それに、どんな仕事に就いているかも知らなかった。

教えてくれなかった。

そして私も触れてこないようにした。

少し怖さを感じたからだ。

もしも、変な人に絡まれていたりするお母さんの姿を見るのが。

正直、お母さんと過ごした時間は少ない。

家に帰ってきても誰もいない。

朝起きても誰もいない。

そんな生活を過ごしてきた。

それでも私は「いってきます」と「ただいま」だけは欠かさず言ってきた。

誰もいないこの家に向かって。
< 12 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop