秘密ゲーム
「そ……そうだね…」

渚は少し寂しそうだった。

でも、本当にこれ以上はいられないし…

「行くよ。渚!」

渚が鍵を持ってドアを閉めたあと、

私と渚は隣を歩いた。

「あのさ……もしも、

暇だったら一緒に帰る?

みんながいなくなってから。」

私が渚に聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で言った。

渚はちゃんと聞き取っていて

とても嬉しそうな顔を見せた。

「本当に?!いいの?!

ありがとう!

でも、みんながいなくなってからって、

ずっと待ってないといけないってこと?」

「えっと………それは……………」

あまり考えていなかった。

でも、みんながいる中、

渚と一緒に帰るのはちょっと気が引ける。

嫌と言うか、

みんなからの視線が気になる。

「と…………とにかく!

帰るの?帰らないの?」

「帰る!

一緒に帰ろう?」

渚は笑ってこちらを向いた。

私は自分の言動に恥ずかしさが出てきた。

「誘ったの私なんだけど…」

「細かいことは気にすんなよ。」

私はなんでここまで渚にするのか分からなかった。

少し寂しそうに見えたから?

友達だから?

というか友達?

それも分からない。

なのに私はなんてことを…

恥ずかしさのあまり、

渚の顔を見ることは出来なかった。

「ごめん。先に行く。」

渚の顔を見れないまま、

逃げるように走ろうとしたとき、

「待って!」

渚はそう言いながら私の腕を引っ張った。

え?何?!

私は驚いて、

自分の持っていたインクの入った容器を落としてしまった。

「ごめん!

そこ柱あるから……

ぶつかると思って……」

「あ。本当だ。」

ずっと私は、渚の顔が見れなくて

下を向いていたから、

前をよく見ていなかった。

「ごめん。ありがとう。」

私はさらに渚の顔が見れなくなった。

落としたインクの入った容器を拾い、

「じゃあ、

またあとでね。」

私は渚に言うと

「わかった。

待ってる。」

と、言われた。

私は走ってその場を離れた。
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