掃き溜め
201711
工場、日向、軍人
「あーもー疲れたっ!!」
俺はそう声を上げると、日向になっている芝生へ大の字に倒れた。ちょっと気温が下がって肌寒いが、その分、陽の光が心地よく体を温めてくれる。午前中いっぱい肉体労働を強いられた俺には至福のひと時とも言える。
俺の働くこの工場はもともと年齢層が高く、数少ない俺と同じで若いやつも貧弱なもんばかり。必然的に俺に力仕事が回ってくる。
「あいつらもちょっと鍛えればできるのにな、、」
「いいだろ、その分こっちは頭使ってんだ。ほら。」
そんなセリフと一緒に俺の腹に暖かい物が乗っかった。同僚の中でも年が一番近くよくつるむ奴が昼飯を持ってきてくれたのだ。
飯だっ!て俺が勢いよく起きて食べ始めると、犬か何かかよ、と言いながら同僚も隣で飯を食べ始めた。
「なあ、知ってるか?怪物が出たって話。」
「ああ、なんかこう、ヤバかったらしいな。」
同僚の質問に俺がそう返すと、あったのが分かればいいよと、半ば呆れ顔で同僚はそのまま独り言のように喋り始めた。
突如、とんでもない怪物が現れたこと。軍は出てくることを分かってたらしく、近隣住民を避難させてたこと。軍はなんらかの対策を持っていて、それで解決できたこと。それでも街は壊滅状況になってしまったこと。
そして、その対策がまだ完全ではないのと、もっと怪物が出てきて強くなってくるという噂があるということ。
「それとこの前、お前もやっただろ?学力検査と身体検査的なやつ。あれもその対策の一部らしいぞ。」
「あーあれ一問も解けなかった。でも、一応埋めたぜ!」
俺が最高の笑顔を同僚に向けると同僚はため息をついた。
「まさか、軍人様がじかじかに怒りに来ることもないだろっ!」
そう言って午後の始業まで寝ようと芝生に横になって目をつぶった俺に影がかかった。
「ふっ、そのまさかの軍人様が来てやったぞ。」
目を開けると、傷跡のある顔に髭の似合うおっちゃんが不敵な笑みを浮かべて俺を見下ろしてた。