恋ふうせん
「え、そんなのわからないわよ。もったいぶってないで教えてよ。」

「思い出の場所。お前にとっちゃ、イライラする場所かなぁ。」

旦那はくすっと笑う。

「ひょっとして、北の大地・・・?」

「ピンポーン。当たり!北海道のまさに小樽。新しく営業所を立ち上げたらしくてさ、会社も結構意気込んでるんだ。夏に家族旅行へ行こうなんて提案したけど、住むことになるとはなぁ。」

函館・・・か。

そして。

転勤か・・・。

白井さんと初めて出会った地に行くんだね。

でも、これで、白井さんともお別れか。

今まで心の中心にあった張りつめた棒がぽきんと音を立てて折れた。
< 102 / 221 >

この作品をシェア

pagetop