恋ふうせん
「なんかドラマみたいな話やんか。ええなー。私やったら、そんな色男が言い寄ってきたら、即効捕まえて、教会の鐘、ガンガン鳴らすわあ。」

私は手を叩きながら笑った。

「でもね。」

急に智子の低音が響く。

「相手も自分も独身である場合の話やで。それは。」

「はい、わかってます。」

ぺこりと頭を下げた。

「わかるで、咲の揺れ動く気持ちは。ものすごいわかる。でも、絶対そのまま走ったらあかん。もう2人きりで会うのはやめた方がいい。私が釘刺したる。これ以上2人で会ったら、とりかえしつかへんことになるから。」

珍しく真面目な顔で智子は私をまっすぐに見ていた。

その智子の瞳はどこか寂しそうな影が潜んでいる。

「私な、実は去年、結婚してもいいと思うくらい、本気で好きになった男性がいてん。誰にも言うてへんかったけど。」
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