恋ふうせん
「咲には、あんな素敵な旦那さんや、かわいい隆太と航太がいるんやんか。あかん、あかん、絶対無理。出会う時期が遅い相手とは縁があるんやない。縁がなかってんて。白井さんも、きっとそのうち気づくはず。だから、深みにはまる前に終わりにしとき。ま、転勤になったんなら、それを期にでもいいから。」

あ、涙が止らなくなってきた。

バッグからハンカチを取り出して、声が出そうなのを必死にこらえた。

「うん。そうだね。わかってる。」

絞り出すように、答えた。
< 118 / 221 >

この作品をシェア

pagetop