恋ふうせん
店員さんが去った後、金曜日のことが気まづくて、2人とも黙ったまましばらく水だけを口に運んでいた。

一息ついた白井さんから口を開く。

「金曜日は色々と申し訳ありませんでした。遅くなってしまいましたが、おうちは大丈夫でしたか?」

白井さんは心配そうに私の顔をのぞき込んだ。

私はあえて白井さんの目を見ずに答えた。

「はい、大丈夫でした。子ども達は私の母に預けてたし、旦那も転勤の件で舞い上がってたので。」

「転勤・・・でしたよね。いつですか?」

「来月頭には旦那だけとりあえず。その後、こちらで諸々のことが片づいてから、私たちも向かう予定です。」

「で、転勤先は?」

「小樽です。」

ふっと白井さんの表情が止る。

「小樽、ですか。またそれは遠いですね。」
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