恋ふうせん
白井さんは小さなため息を一つつくと、カフェの窓の向こうをぼんやりと見つめた。

その横顔をじっと見つめてしまう。

長い睫毛。

形のいい鼻。

ひきしまった口元。

今の私にはどうすることもできないから、白井さんの全てが余計愛おしく見える。

心が震えた。

「もう、このまま会えなくなってしまうのかな。」

白井さんは遠い目をしたまま、わずかに口元をゆるめた。

「僕は、そんなの耐えられないな。」

小さなつぶやくような声で言った。

私の胸はキュンと何かにつままれたように苦しくなる。
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