恋ふうせん
「すみません。咲さんのことは未知には悟られないよう気をつけて、携帯はいつも手放さないようにしていたんですが、木曜の晩、少し酔って帰ってきてすぐにリビングで寝てしまったんです。その時に、どうも未知は僕の携帯メールを勝手に見たらしくて。」

「未知さんは?」

喉がからからにかわいて声が思うように出ない。

「状態が落ち着いた後、かなり責められました。咲さんとのこと。」

心臓が飛び出しそうなほどバクバクしている。

「未知さんには何て?」

「僕が一方的にひかれているっていうことだけを話しました。もう嘘はつけなかった。」

「そんな。」

この「そんな」っていうのは、白井さんが全て責任を負ってしまったことに対しての申し訳なさと、咲さんに2人の関係を知られてしまったことに対する恐怖に似た不安から、ふっと出てきた言葉だった。
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