恋ふうせん
「咲さんは何も心配することはありません。全て僕の責任ということで未知には伝えているし、今回咲さんが転勤されるという話は、未知に責められる前にメールで知っていたので、それを理由に僕がお誘いしたということにしてあります。だから、咲さんは何も心配しないで。」

「あ。メールは見て下さってたんですね。」

「はい、未知が往診後、落ち着いて寝てしまった後に拝見しました。」

転勤のメール、あの時送ったのは虫の知らせだったのかもしれない。

白井さんは、私の手を静かに離すと、敢えて優しく笑いかけた。

「大丈夫です。どんなことがあっても、咲さんにご迷惑がかからないように、僕が守りますから。」

どくん。

心臓の血液がいつもの倍ほどの量を私の体内に送ったような気がした。
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