恋ふうせん
だめだ。

私は白井さんを忘れることなんてできない。

どんなに遠く離れても、つながっていたい。

例え、それがよくないことでも、誰かを傷つけることであっても。

今日で会うのを辞めようと決意してきたはずなのに、私の気持ちはその反対に向かって突き進んでいく。

白井さん、そんなに優しくしないで。

ふっと智子の言葉が脳裏をかすめる。

『隆太と航太の顔思い浮かべてみ』

お鍋がふきこぼれているの見て、不安そうに私の腰にしがみつく隆太。

我が道を行く航太。

愛しい2人の姿がふわっと目の前に現れた。

『出会う時期が遅い相手とは縁があるんやない。縁がなかってんて。』

智子のだめ押しの一言が、隆太と航太の姿の向こうにこだましている。

ふぅ。

テーブルの下でぎゅっと両手を握りしめた。
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