恋ふうせん
だめだめ。

いやだなー。

こんなところで泣いてたら、まるで失恋でもした女性みたいじゃない。

恥ずかしいよ。

「・・・咲さん?」
 
ふいに、聞き慣れた愛しい声が背後で聞こえた。

涙があふれたままの目で振り返る。

白井さんは、そんな私をじっと見つめながら、ゆっくり近づいてきた。

そして。

私を包み込むように正面からぎゅっと抱きしめた。

優しく、そして、強く。
< 138 / 221 >

この作品をシェア

pagetop