恋ふうせん
白井さんの頬が私の頭の上にくっついている。

熱い。

心も体も熱くなっていく。

誰かに見られても構わないくらいに愛しい白井さんの体温。

どれくらい経ったんだろう?

ゆっくりと白井さんの体と腕が私の体からほどけてゆく。

優しく潤んだ瞳で、白井さんは私に微笑んだ。

そして、私の右手をつかんで、足早にバラ園の奥へ進んでいく。

その先に何があるの?

少しわくわく胸を躍らせながら、まるで高校生に戻ったようなときめきを抱えて、白井さんの後ろをついて行く。

空は次第にオレンジから藍色に染まり、私達2人を人目につかない薄暗い森の中へかくまってくれているようだ。

バラ園を抜けると、大きなクスノキが何本も生えた、少しうっそうとした場所に出た。

白井さんは足を止めることなく、一番大きなクスノキの根元の前で止った。
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