恋ふうせん
「白井さんのあの眼光は、今も変わってないな。誠実そうだけど、なんかこう、同性としてはあなどれないっていうか、なんか怖い存在だよ。」

これは、私に対する牽制の意味もこめてなのか、単純にそう感じたのかは、旦那の表情からはわからなかったけど。

でも、今は白井さんのことをわかった風に語っている旦那と一緒にいるのは辛かった。

「ごちそうさまー。私先お風呂入って寝るわ。後はごゆっくり。」

その場から早く立ち去りたい一心で、自分のコップを持ってそそくさとキッチンへ戻る。

「ちぇ、もう終わりかよ。最近つれないよな。」

旦那は少年のようにふてくされた声でつぶやいた。

そうね。最近つれないかもね。

私は、わざとらしく大きな伸びをしながら、バスルームに向かった。
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